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2014年の1年間に読了した120冊の全記録

期間 : 2014年
読了数 : 120 冊
火星の人
アンディ ウィアー / 早川書房 (2014-08-25)
読了日:2014年12月31日
今年最後の読書となった。文化放送のPodcastで知ったのだけど、朝から夕方までにイッキ読みしてしまった(大晦日なのに)。はやぶさ(1)のスケールをぐんと拡大してかつ有人にしたらこんな感じなのかなあなんて思いながらあっという間に読んでしまった。まるでリアルなブログを読んでいるかのような翻訳も最高だ。
リドリー・スコット監督で映画化されるそうだけど、あんまりど派手なCGとか使わずこのちょっとしたユーモアを伝えてくれると嬉しいな。

しかし主演がマットデイモンってインターステラーみた観客は大爆笑ではなかろうか。
ミャンマーの柳生一族 (集英社文庫)
高野 秀行 / 集英社 (2006-03-17)
読了日:2014年12月29日
妻が買ってきた本を借りて妻より先に読了してしまった。いつもながらの高野節にひぃひぃ笑いながら1日で読んでしまった。去年読んだ「アヘン王国潜入記」を再読したくなったけどたしか誰かにあげてしまったのだ。仕方がないからソマリランド本でも読み始めようかな。間違いなく中毒性が高い高野ワールド。
国境の南、太陽の西 (講談社文庫)
村上 春樹 / 講談社 (1995-10-04)
読了日:2014年12月24日
年に一度の人間ドック、何か本でも持っていこうと思って手に取ったのがこれ。検査の待ち時間に読みながら半日で読んでしまった。島本さんはすごい。登場人物はみな村上ワールドの住人が名前を変えて出てくる。この本が書かれたのは1992年だけどそれから20年して今度は多崎つくるという名前で巡礼を始めるのだ。
Carver's dozen―レイモンド・カーヴァー傑作選 (中公文庫)
レイモンド カーヴァー / 中央公論社 (1997-10)
読了日:2014年12月20日
ヒースロー空港のカフェで読み始め、読み終わったのは暮れも押し迫った12月の末だった。各短編のまえに訳者(村上春樹)の解説があるが故にちょっと肩に力がはいってしまうのがどうかなって思ったけど、でもそれがなかったら魅力も伝わらなかっただろうし。

「でぶ」「サマー・スティール」「あなたお医者さま?」「収集」「足もとに流れる深い川」「ダンスしないか?」「大聖堂」「ぼくが電話をかけている場所」「ささやかだけれど、役にたつこと」「使い走り」「父の肖像」「レモネード」「おしまいの断片」

僕が好きだったのはやっぱり「大聖堂」かな。
マックス・ウェーバーを読む (講談社現代新書)
仲正昌樹 / 講談社 (2014-08-20)
読了日:2014年12月18日
なんとなくスルーしてしまっている気がして入門書でも読んでみようかなと。
社会科学の項目。ネットで意見を述べる人の傾向として、「どうしてこんな自明のことが世の中では実行されないのか」と憤る人たちがいる。よくよく眺めてみると理系の専門家である場合が多い気がする。
世の中には単純明解な法則があるがそれを知らない、できない人間がいることこそが問題である、という認識に基づくものなのだろう。この本で紹介されるウェーバーの"「Bが生じる場合 、必ずその原因として Aが作用している 」というような形で 、普遍的な因果法則を確立することを 、社会科学では無意味だとウェーバーは断言する 。"という記述を読むとなるほどそういうことなのかもなあ、と納得したりするのである。
イギリス 繁栄のあとさき (講談社学術文庫)
川北稔 / 講談社 (2014-03-10)
読了日:2014年12月14日
Amazonお薦めにすすめられ。イギリス旅行から戻ってきてから読んだ。とてもよい本ですこれは。のっけから「歴史は、それほど楽観的にも、それほど悲観的にも、見られるべきではない。極端な悲観論は間違いだが、政治家が振りまく「特効薬」や極端な楽観論もまた、眉につばすべきものである。」と来る。ほんとその通りだと思う。

その上で「この議論は、「産業革命の故郷」であり、「最初の工業国家」であったはずのイギリスに、国民経済の体質を転換させるような現象としての「産業革命」は存在せず、「産業資本主義段階」などというものもなかったという結論につながる」と来たらそりゃ読まないわけにはいかない。

そして日本論としては「今日なお、日本人がイギリス史研究から得るものがあるとすれば、少なくともそのひとつは、いったん成功した経済のゆくえの問題であり、もしかすると必然であるかもしれない「衰退」の中身の問題である。」という切迫したこれからの国家の向かう方向にまで言及している。

インドに行ったときも、ポルトガルに行ったときも思ったけど「ピークを過ぎて枯れた国はいいねえ」ってことだ。イギリスもそういう意味でとても落ち着いてて、枯れてて、味のある国だった。これから日本もそういう国を目指せばいいのだ。昔は良かったと戦前のへの回帰を訴えたり、さらに安価に働いて戦後の輸出国家への回帰を夢見たりするのでなく、そういった過程を経て蓄積したさまざまな魅力を国民が楽しみ、海外からも羨望の眼差しで人が訪れるような国に仕上げていけばいいと思う。
メール文章力の基本 大切だけど、だれも教えてくれない77のルール
藤田英時 / 日本実業出版社 (2010-05-27)
読了日:2014年12月12日
日替わりセールで。ネタに使えるかなと。考えたら書いてある大抵のことはすでにやっていた。でもこういうルールみたいのが面倒くさくなってSNSのメッセージに逃げているってのも実情なわけで、守破離の構えで若い人に読んでもらうのはいいかもしれない。
戦争を演じた神々たち[全]
大原 まり子 / クリーク・アンド・リバー社 (2014-05-08)
読了日:2014年12月10日
旅のお供に良いかもなと日替わりセールで。細切れに読んだせいでなんどもページ(画面)をめくり返してジグザグで読んだのだけど、難解な物語が最後きちんと収斂していくところが面白かった。
広告の基本 この1冊ですべてわかる
波田浩之 / 日本実業出版社 (2007-10-01)
読了日:2014年12月10日
日替わりセールで。最初ちょこっと読んだままずっと放置(電子書籍の場合、積ん読はどう表現するのだろう?)していたが、年末思い出して読み進めてみた。
ちょうど知り合いがテレビコマーシャルを出すとか出さないとか言っていたので、なるほどなと参考になった。
テレビや雑誌、新聞の裏側でどういった仕事が繰り広げられているのかを知るだけで、毎日が少し楽しく暮らせるのだとしたら、いろんな分野のお仕事について見識を広げるのは娯楽としてとても面白いものだとおもった。
自動車革命―リチウム電池がすべてを変える
NHK取材班 / NHK出版 (2011-03-24)
読了日:2014年12月9日
これも日替わりセールで。中国とアメリカと日本で様相が異なる電気自動車開発をレポートした本。2011年3月発行だからたぶん原発事故は念頭にないのだと思う。常々疑問なのだけど、完全電気自動車やプラグインハイブリッドは結局のところ発電所に依存してしまうわけで、原発が停止している現在、多くのエネルギー源を化石燃料から得ている点で、ガソリン車とさほど変わらない、いやむしろエネルギー効率としては不利なんじゃないか、と思えてしまうのである。計算したわけではないんだけど。
つまり、この本のベースになっている「電気」とは社会的インフラとしてすでに安定的に昼も夜も供給されるものであり(夜間電力で充電するという意味では原発前提かもしれない)、それって2011年3月以降の特に日本においては決定的に状況が変わってしまったのではないかと思うのです。

だからどうってわけじゃなんだけど。いずれにせよ必要なことはよりエネルギー効率の良い移動方法を今後も開発していくことに間違いない。でも他方で社会全体を見渡して非効率、無駄な移動(年末年始の挨拶回りとかルートセールスとか)をも対象にしていかないと結局のところ化石燃料は底をつき地球はどんどん暖かくなっていくのではって気もします。
TVピープル (文春文庫)
村上 春樹 / 文藝春秋 (1993-05)
読了日:2014年12月9日
90年代前後の短編集。「TVピープル」「飛行機」「我らの時代のフォークロア」「加納クレタ」「ゾンビ」「眠り」の6編、どれも印象的な話だ。妙な話でたぶん誰も賛同してくれないと思うけど、加納クレタは松本零士のマンガみたいだった。いや全体的に2人の作品世界にはどこか通じてる気もするのだ。
カンガルー日和 (講談社文庫)
村上 春樹 / 講談社 (1986-10-15)
読了日:2014年12月6日
23編のショートショート。Q氏とか挿絵の雰囲気とかあいまって星新一をちょっと思い出した。どれもこれも面白いけど、ガロにでてくる漫画みたいな雰囲気の「チーズ・ケーキのような形をした僕の貧乏」がけっこう好きかも。
1981年から83年までに連載されたってことだから僕でいうと高校2年生から大学1回生までの期間だ。あのころの時代を思い出しながら読んでみるのも興味深い。

「カンガルー日和」「4月のある晴れた朝に100パーセントの女の子に出会うことについて」「眠い」「タクシーに乗った吸血鬼」「彼女の町と、彼女の緬羊」「あしか祭り」「鏡」「1963/1983のイパネマ娘」「バート・バカラックはお好き?」「5月の海岸線」「駄目になった王国」「32歳のデイトリッパー」「とんがり焼きの盛衰」「チーズ・ケーキのような形をした僕の貧乏」「スパゲティーの年に」「かいつぶり」「サウスベイ・ストラット」「図書館奇譚」
螢・納屋を焼く・その他の短編 (新潮文庫)
村上 春樹 / 新潮社 (1987-09-25)
読了日:2014年11月24日
たしかイギリスに持っていってて、最後の日にヒースローのカフェで読んだのだと思う。風邪で発熱していて朦朧としてたせいか、あまり記憶が定かでないのだけどたぶんそうだ。
「蛍」「納屋を焼く」「踊る小人」「めくらやなぎと眠る女」「三つのドイツ幻想」が収録されている。1984年だから僕が大学生の頃に出た本だ。そのせいか誰かの下宿でこの本の背表紙を見かけたことがある気がする。これも記憶が定かでない。
「蛍」はノルウェイの森の原型だ。だからこの1ヶ月間で同じ話を僕は何度も読んだことになる。好きなのは「めくらやなぎ」かな。これも似た話をなんどか読んだ気がする。でも定かではない。
東京奇譚集 (新潮文庫)
村上 春樹 / 新潮社 (2007-11-28)
読了日:2014年11月24日
2週間近いロンドン旅行の最終日、ヒースロー空港で長い時間を過ごすことになり、カフェに陣取ってこの本を一気読みした。
「偶然の旅人」
「ハナレイ・ベイ」
「どこであれそれが見つかりそうな場所で」
「日々移動する腎臓のかたちをした石」
「品川猿」

いずれも日常にぽっかり穴が空いたような歪みを見つけてしまったが最後、ちょっとおかしな非日常が顔を出すのだけどそのうちどっちがまともなのか判然としなくなるような、そんな話だ。僕はどの物語もとても気に入った。
A03 地球の歩き方 ロンドン 2014~2015 (ガイドブック)
地球の歩き方編集室 / ダイヤモンド社 (2014-03-01)
読了日:2014年11月24日
今回のイギリス旅行はロンドンだけ回るわけではないと思っていたので、イギリス編とロンドン編の2冊を買ってもっていくことにした。結果的にはリヴァプールとマンチェスターと3都市を回ったので正解だったのだけどけっこう高くついた。

いつもこの本はバラバラにしてしまい、「現地で必要なページ」だけを厳選して持参することにしている。今回もそうしたのだけど、もうひとついつもとは違うチャレンジをしてみた。それは全ページスキャナで読み取ってOCR→PDFにしEvernoteに入れたことだ。現地ではiPhoneをつかい、全文テキスト検索で華麗に活用・・・と思ってたのだけど、やっぱり紙の方が便利だった。ドミトリーを泊まり歩いたので夜中に目が覚めて調べものするときには紙より画面の方が役立ったけど。
A02 地球の歩き方 イギリス 2014~2015
地球の歩き方編集室 / ダイヤモンド社 (2014-07-19)
読了日:2014年11月24日
生まれて初めて海外に出たときからガイドブックといえばずっと地球の歩き方だった。当時(1987年)の歩き方といえば、欄外に書かれたいろんな先輩たちの失敗談やミニ情報が現地での唯一の情報源になったりしたものだ(些細な情報に過剰に飛びつく日本人が爆発的に増えたりして当時から地球の歩き方を持ち歩く日本人を蔑む旅人も多くいた気がする)。

30年も経つとこの本もすっかりオシャレなガイドブックとなって昔みたいな小汚い貧乏旅行者を相手にしてたアングラな雰囲気は消えてしまい(隠されているだけかもしれない)、いい年をこいたオジサンが持ち歩いても恥ずかしくない装丁となった。

でもやっぱりどこか他のガイドブックとは違った波長を発していてそれはやっぱり肌触りの良い感じなのであります。
遠い太鼓 (講談社文庫)
村上 春樹 / 講談社 (1993-04-05)
読了日:2014年11月17日
1986年から1989年までの3年間に村上春樹夫妻がヨーロッパ各地に旅したり住んだりしながら書き留めた旅行記。以下2つの点でこの本とちょっとした縁を感じた。

1)最初の海外旅行は1987年のインド旅行だった
2)この本をイギリス旅行中に読んだ

ギリシャやイタリアに行ったことなんてないのだけど、ロンドンのドミトリーや移動中の列車の中でページをめくりながら、まるで30年近い時間を越えて世間話のような旅行話を聞かされているようでこれまでにない読書体験となった。

1980年代に個人が仕事をしながら世界を旅し続けるなんて売れっ子作家くらいしかできない離れ業だと思われていたけど、2014年にもなるとネットとかスマートフォンのおかげで僕みたいな人間でも2週間程度なら平気に旅ができるようになった。いろいろマイナス面も取りざたされているけど、有り難いことだなと感じた。
LIVE from LONDON ナマのイギリス英語を味わう!
岡田 久恵 / ジャパンタイムズ (2003-05-09)
読了日:2014年11月13日
イギリスの英語はアメリカとは全然ちがう!とは事前に何度も目にしていたので、へぇーどんだけ違うんだろう、と検索したらこの本にいきついた。たくさんのイギリス本を一気に買ったので予算オーバー気味、申し訳ないけどブックオフで購入。
CDをiPod Shuffleに取り込み散歩中に聴きながら、あらかじめスキャンしておいた全ページをたまに参照したりしながらざっと読んだ。確かに発音はちょっと違うけど、アメリカ英語をバリバリ理解して話せるわけでもないので、まあどっちもどっちだ。でもちょっとだけ慣れることができたのかもしれない。

帰ってきてからもたまにiPhoneのシャッフルプレイでひょこっとこの音源が聞こえてきたりするとちょっと懐かしい気にもなる。地下鉄の騒音とか。Lovely!
「サル化」する人間社会 (知のトレッキング叢書)
山極 寿一 / 集英社インターナショナル (2014-07-25)
読了日:2014年11月11日
TBS Podcastを聴いてたらとても読みたくなって。半月ほど待たされたので人気なのだろう。
勝ち負けをつくらないゴリラ。上下関係に厳しいサル。ゴリラに比べると不安定で偏っていて不遜でズル賢くて自ら馬鹿げた選択を繰り返しおまけに反省することもなくただの数を増やしてきただけのニンゲンが少し愛おしくすら感じた。
読み物としてとても面白いし居酒屋談義に使えそうな話が満載で、価値ある本だと思う反面、著者の考え方にはいくつか賛同できない場面がいくつかあったのも事実(家族観とかITに対する偏見とか)。でもそれだからより面白いのかもしれない。
美しいイギリスの田舎を歩く! (集英社be文庫)
北野 佐久子 / 集英社 (2007-01)
読了日:2014年11月10日
これもイギリス関係一気買い。タイトルだけでこれは自転車とかバイクとかリヤカーとかで田舎を放浪した日記か何かだろうと勝手に思い込んでいたのだけれど、そんなことはまったくもって違ってまして、オシャレで可愛くて美しいイギリスの田舎を紹介した本でした。
でも読んでいくうちに、そうかこれもイギリスなのだなあと。紹介されている絵本や文学にほとんど触れたことのない僕だけど、きっとそんな世界に憧れて育ってきた人にはとても大切な場所になるんだろうと思った(僕にとってのEMIスタジオ前の横断歩道のように)。
イギリスはおいしい (文春文庫)
林 望 / 文藝春秋 (1995-09)
読了日:2014年11月10日
イギリスは飯がまずい、という噂は本当だろうかと読んでみた。読み進めると「実際にはそんなことない」って書きながらこれでもかと実に不味そうに表現されてて、旅行を前にちょっと絶望的な雰囲気になってきた。

ところが最後まで読み進めていけばけっしてそんなこともなく、いやいやイギリスええとこやん、と思えてきたのでまあいいかと。

で実際に12日間うろうろしてきた感想を書かせてもらうならば「貧乏旅行者にはほぼ無縁のレベル」でありました。朝はまだしも昼はサンドイッチ、夜はビールとつまみの生活だったらまあぜんぜん気にもならんというか十分美味しい旅を送ることができました。
一杯の紅茶の世界史 (文春新書)
磯淵 猛 / 文藝春秋 (2005-08-19)
読了日:2014年11月9日
イギリスと言えば紅茶だってことで、喫茶店ではコーヒーばかりの僕も少し勉強してみようと買ってみた。別にコーヒー党ということではなく、面倒だから一番上に書いてあるメニューを頼んでるだけなんだけど。でもなぜかスタバでは昔からずっとチャイティーラテだ。

いやでもこの本はとても面白かった。中国茶、日本茶、紅茶、インド、アフリカ、アメリカと移り変わりながらこの葉っぱをお湯に通した不思議な嗜好品が地球に拡散し、経済ばかりか政治までを左右していくさまがダイレクトに伝わってきた。それもこれもイギリスのレディース&ジェントルマンどもの仕業、いや活躍のおかげだ。それ加えてアイルランド、スコットランド、アッサム、セイロンなど周辺地域の存在がさらにエッジを効かせるのだ。

10年前の新書だけど、こういうのこそ新書として望まれるテーマだとおもった。
イギリスではなぜ散歩が楽しいのか?
渡辺 幸一 / 河出書房新社 (2005-05-17)
読了日:2014年11月9日
イギリス関係エッセイをブックオフでざっくり買ったなかの一冊でイギリスのシティで仕事をしていた日本人ビジネスマンのエッセイである。出版が2005年だから10年近くも前の本だけど、基本的なところはあまり変わっていない気がした(帰ってきてから書いてます)。

この本を読んだ後にイギリスが舞台の映画や小説を体験するとまた違った楽しみ方ができる気がした。特に印象深かったのは飼い犬に関するあたりだ。大きな政府と小さな政府、自由と干渉、隣人との距離感、すべてにおいて日本やアメリカとは少しずつ違う彼らの生き方を通して、より複眼的、多元的な価値判断ができるようになれば、僕ももう少し成長できる気がしたのだ。
資本主義の終焉と歴史の危機 (集英社新書)
水野 和夫 / 集英社 (2014-03-14)
読了日:2014年11月8日
水野本はここのところ数冊読んでたのだけど、知合いが読んだか?と聞いてきたのでもちろん読んだよと答えたあとに慌てて買った。基本的な話は今まで読んだ本を踏襲しているけど、面倒な言い回しを避けてわかりやすく書いてある印象。

本書を読みながらふと「ハビタブル・ゾーン」という懐かしい言葉を思い出した。小学生か中学生のころ天文ファンだったのだけどそのころ知った言葉だ。太陽系の中で地球の軌道とその周辺でしか生物は発生しなかったという説で、金星に近づいてもあるいは火星まで少し遠ざかっても、太陽に近すぎたり遠すぎたりして生命の発生進化には適しなかったという考え方である。

なんでそれを思い出したのかといえば、この本に登場する単語、「統制経済と放任経済」「社会主義的計画経済と新自由主義」「反資本主義と市場原理主義」といった相反する考え方、その両極の中間点にこそ我々のハビタブル・ゾーンがあるのではないか、と考えたからだ。

どちらが正しいとか間違っている話ではなく、ある一方に振れた時にはその逆のベクトルに社会を引っ張ってあるいは誘導してうまくハビタブルゾーンから出ないように調整するのが政治であり行政だと思うのだ。社会の流動性が失われつつある時にはあえて競争条件に揺らぎを与えてみたり、流動性が大きすぎる時代にはできるだけ安定させるよう規制を強化してみたり。さまざまな手法を使いながらできるだけ「おいしい」ゾーンに社会を留めおくことがマネージメントなのだと思う。

それをベクトルの向きだけ捉え、やれなんとか原理主義だ反対などと大声で唱えるのはまったくもって幼稚だし、ある意味原理主義的、イデオロギー的な反応なのだと思う。

社会が今どの位置でに固着しているのか。または急激に触れようとしているのか。そしてそれは歴史的な経緯でどう捉えるべきなのか。そんなことを踏まえて試行錯誤しながらハビタブルのなかに収めていく知恵と技術が求められているのだと思う。

歴史観や大きな物語を意識することはその意味でとても重要なのだと感じた。
「イギリス社会」入門―日本人に伝えたい本当の英国 (NHK出版新書 354)
コリン・ジョイス / NHK出版 (2011-07-07)
読了日:2014年11月4日
ジョイスの本は2冊目。こないだ読んだ本より前に書かれた本を後で読むことになった。日本に長く住んだイギリス人が書いた本だけになかなかコアな話が詰まっていた。行く前に読んであまりピンとこなかったエピソードも帰ってきて再読するとまったく違う輝きで読めるのが面白い。たぶん何度も通ったり、あるいは留学したり住んだりしたことのある人にとってはもっと楽しめる部分が見えてくるんだろう。
ワセダ三畳青春記 集英社文庫
高野秀行 / 集英社 (2003-10-22)
読了日:2014年10月31日
紙の本を妻が持ってるはずたけど、旅先で読もうと思って日替わりセールでダウンロード。ところが旅に出る前に読んでしまった。「イスラム飲酒紀行」以来、ほぼ同い年の高野氏の著作は夫婦して片っ端から取り寄せて読んでいる。中毒性があるのだ。その中毒性がどこから来たのか、そんな僕らの謎を解き明かしてくれる高野秀行の作り方、みたいな本だった。
イギリスの歴史が2時間でわかる本 (KAWADE夢文庫)
歴史の謎を探る会 / 河出書房新社 (2012-04-17)
読了日:2014年10月28日
イギリスに行く前に歴史を整理しておかねばと。2時間では読めない量の情報がぎっしりと詰まった本だった。高校の時に世界史で習ったはずなんだけど、30年も経てばそんなメモリーはあっさり揮発していたようだ。
この本でわかったこと。歴史は1年もかけて勉強するより、1日であっさり振り返った方がいい。
映画で言えば結末が現代だ。そこまで流して観た後で「どうしてこうなったのか」という視点をしっかり持ちながら過去の出来事を振り返った方が断然リアルなのだ。
面白かったのでこの本は全ページスキャナで取り込んでPDFにしiPhoneに仕込んで現地へ持ち込んだ。博物館での休憩時に検索してページを読み直してみるのもまた良い体験となった。
驚きの英国史 (NHK出版新書 380)
コリン・ジョイス / NHK出版 (2012-06-07)
読了日:2014年10月27日
溜まったマイルが消えてしまう前にどこかに行こうと思い立ち、唐突にイギリスにひとり旅することにした。理由はこれまで行ったことが無かったところだから、それだけだ。イギリスについてはこれまでも様々な趣味を通じて見聞きしてきたつもりだけど、アメリカに比べるとかなりぼやけてしまっている。ぼやけたままでかけても何だかもったいないと思って、Amazonで検索し、イギリスに関する書籍をいくつか取り寄せてみた(こういう買い方は地元の小さな書店ではなかなかできないことだ)。

僕はこの本を読んだ後ロンドンやリヴァプールやマンチェスターで12日間を旅した。帰りに買ってきたお土産はこの本で知った「Keep Calm and Carry On(落ち着いて行動しましょう)」という標語がプリントされたティーカップだった。

(追記)
----いまイギリス人は当時の「イギリス人らしさ」を少しでも受け継いでいることを願っている。それは悪と真正面から対決するという偉大な勇気より、困難な状況の下でも日々をていねいに過ごそうという決意だ。武器を取れという勇ましい号令ではなく、自分の力ではどうにもならない事態のなかでも人々が手にしたいと願うことのできるものだ(P.25)-------

まさか2015年1月になってこの記述がこんなにも突き刺さるとは。
日本人は人を殺しに行くのか 戦場からの集団的自衛権入門 (朝日新書)
伊勢崎 賢治 / 朝日新聞出版 (2014-10-10)
読了日:2014年10月26日
セッション22で著者の解説するアフガニスタンからイラク、イスラム国のテロの系譜に興味を持ったのでアマゾン購入。
他国を攻撃する熱狂的な人々を抱える日本は既に戦争の前段階にあるのだという。空論ばかりまかり通る危なっかしい現状への危惧はもっと共有されるべきだと思った。

「正義の追求で何も打開することができず、もはや戦いに決着がつかない状況になったとき、争議に「落としどころ」を探す必要があるのです。弊害が多いことを覚悟したソフトランディングーーーそれが、「真実」の究明です。つまり紛争当事者同士が、加害者、被害者の立場から「真実」を追求するのです」(p.191)

数々の紛争の現場で武装解除に携わってきた人間から発せられたこの言葉は限りなく重い。手垢の付いたネット上に転がっている「真実」とやら正義感に駆られて拡散し、誰かがどこかで革命を起こしてくれることを漠然と願いながら日常を繰り返している僕ら日本人にいま必要なことは「交渉」により問題を解決し、生き延びる覚悟なのだと気づかされた。
SIMフリースマホと27日間世界一周
中山智 / 中山智 (2013-02-16)
読了日:2014年10月23日
SIMフリーについて調べてたらあるブログから誘導され。このあとSIMフリーiPhone6を買って渡航先のロンドンでSIMカードを買ってイギリス国内を移動するひとつのきっかけとなった。
九月、東京の路上で 1923年関東大震災ジェノサイドの残響
加藤 直樹 / ころから (2014-03-07)
読了日:2014年10月21日
これもSession22で著者出演回を聴いて注文。関東大震災におけるデマについてはいくつかの本で読んでいたし、何となくあったんだろうなあ、という程度の知識だった。けれども詳細な経緯や実際の新聞記事などを追いかけていくと、けっして「昔の人は無知蒙昧だった」などとかたづけてしまうことのできる話題ではないことが分かった。2014年の現代においてもこれとさほど変わらぬ思考の流れがしっかりと生き残っている。
市井の人々が「良かれと思い」「正義感に駆られ」昨日まで親しかった隣人を突き出し、殺していく恐怖はしかしこの国の東京で実際に起きた出来事だった。現場に漂う空気を表した言葉、それはこの本にも何度も出てくる「さもありなん」という単語だった。

僕らはこの3年ちょっとの間、いったい何度「さもありなん」という言葉を使ってきたことだろう。そしていま人種や民族や宗教に絡むさまざまな偏見を見聞きするたび、「さもありなん」という空気がその場を支配し、普通に暮らしている人々が奇妙な正義感とひねくれたルサンチマンにこれまで見せたことのない人間性を発露し始める新しい時代の繰り返された現場に、いま僕は立っているのだ。はたして僕は踏みとどまることができるのだろうか。
高い城の男
フィリップ・K・ディック / 早川書房 (1984-07-31)
読了日:2014年10月14日
セッション22でアイドルが薦めていたのを聞いて、面白そうだなとその場でダウンロードした。実際とても楽しめた。第二次世界大戦で枢軸国側が勝利した世界で、合衆国市民のひねくれた生活を描く1962年の作品。おもったほど日本が悪く描かれたないのがちょっと珍しいというか面白いなと思った。
スプートニクの恋人 (講談社文庫)
村上 春樹 / 講談社 (2001-04-13)
読了日:2014年10月14日
実はこの本と平行して「遠い太鼓」を読み始めたので、まるで取材旅行記みたいに思えたのだった。失踪した恋人をギリシアの島まで探しに行く物語だけど、2014年だともうこんな物語は成立しえないのかもしれない。でも大切なことはひとつひとつのシーンなのだと思う。彼が文字を使って描くシーンは読者の脳に刻み込まれ、これからの人生で何かの拍子により色彩豊かに再現されていくのだ。まるで生きたままのライカ犬が空の彼方から見守っているようにだ(なんてね)。
ナショナリズム入門 (講談社現代新書)
植村和秀 / 講談社 (2014-05-15)
読了日:2014年10月10日
ここしばらくテレビも新聞もネットも「日本はすごい」ばかりで食傷気味だったこともあり、ナショナリズムについて一度考えをまとめておきたいと思って買った。
国境線のない日本に住んでいると「国家」「国土」「民族」「国民」なんて言葉を特に意識して区別もせずに使ってしまうけど、考えたらぜんぜん違う概念なわけで。そもそも「国民国家」という概念自体もそう古いわけではなく、まして日本でいえば明治維新までは国内に藩という諸国がたくさん共存していたわけだから、「国体の護持」なんて発想は下から出てきたものでないことは明らかだ。もっといえば統治のために作り上げられた発想だったのだと思う。

著者はナショナリズムそのものは必要だと考えている。問題は乱用されたときにそれに踊らされない民の冷静さ、智恵、知識なのだと思う。たかだか150年前に練り上げられた国家像を護るために熱くなってる人たちを見ると、ちょっと違うんじゃないのかなと常々感じる。
世界を変えた10冊の本
池上 彰 / 文藝春秋 (2014-02-10)
読了日:2014年10月10日
日替わりセールで。池上本は初めて買った。書籍ってのは時代を遡れば遡るほど今以上のパワーを持ったメディアだったのだなあと思った。今は電子書籍で何でもすぐに読むことができるけど、だからといって以前から何か変わったのだろうか。

下記取り上げられている10冊、ほとんど読んでないから死ぬまでには読んでおこう。

アンネの日記
聖書
コーラン
プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神
資本論
イスラーム原理主義の「道しるべ」
沈黙の春
種の起源
雇用、利子および貨幣の一般理論
資本主義と自由
本当の仏教を学ぶ一日講座 ゴータマは、いかにしてブッダとなったのか (NHK出版新書)
佐々木閑 / NHK出版 (2013-02-09)
読了日:2014年10月5日
日替わりセールで。「宗教と哲学の違いは何か」と問われたらどう答えようか、と少し前に考えてみたことがある。当時僕の考えた答えは「考え方をあれこれ提示してあとは自分で考えろ、が哲学で、答えは私が知っているから従えば幸せになる、というのが宗教」というものだった。正解かどうかはわからないけど、その考えでいけば、「部派仏教(小乗仏教、上座仏教)は哲学で、後に大乗仏教が宗教として広まった」という理解でいいのかな。

徹底して生産活動をしなかった仏教は都市型宗教だったというのは初めて知った。宗教に関してはずっと不得意分野のままなのでたまにこういう本で補強しておくのもいいのかな。

「怒らないことによって怒りに打ち勝て」という言葉は沁みた。
中国行きのスロウ・ボート (中公文庫)
村上 春樹 / 中央公論社 (1997-04)
読了日:2014年9月23日
短編集。「中国行きのスロウ・ボート」「貧乏な叔母さんの話」「ニューヨーク炭鉱の悲劇」「カンガルー通信」「午後の最後の芝生」「土の中の彼女の小さな犬」「シドニーのグリーン・ストリート」。
短編の方が好きかもしれない。特に芝生の話とシドニーの話は大好きだ。
神の子どもたちはみな踊る (新潮文庫)
村上 春樹 / 新潮社 (2002-02-28)
読了日:2014年9月23日
阪神大震災をテーマとして通底させた短編集。

「UFOが釧路に降りる」
「アイロンのある風景」
「神の子どもたちはみな踊る」
「タイランド」
「かえるくん、東京を救う」
「蜂蜜パイ」

後に書かれることになる長編の元ネタらしきエピソードを見つけたりして例によって一筋縄ではいかない読み方もできるようになって、一人の作家を集中して読むことの楽しみを憶えたのだと少し満足げ。

それにしてもどうしてこれまで僕は本の再読をあまりしてこなかったのだろう。
考えたら買ったCDなどはその後10回も20回も聴き込んでいくうちにようやくフレーズを憶えたり、細かな音源の絡みに気がついたり、歌詞の隠喩にはっとしたりするものだ。でも文学ってそういえば再読しても2回か3回だし、一度読んだっきりの本もたくさんある。何だかもったいない話だなあ、とこの記録を書きながら考えているところ。
まあ将来やることがなくなったら本棚やKindleに残っているテキストを読みながら余生を暮らすってのも悪くはないとは思うけど。
もし僕らのことばがウィスキーであったなら (新潮文庫)
村上 春樹 / 新潮社 (2002-10-30)
読了日:2014年9月23日
小説ではなく、生の村上春樹が直接語りかける本はたぶんこれが初めてなんだけど、まったくといって良いほど違和感がなかったのは小説の中の「僕」と著者との区別が付かなくなってきてるからだろう。作者も読者も。
この本を読みながら「そうだイギリスへ行こう」と思いついた。いや本当はスコットランドかアイルランドに行こうと思ったのだけど、時期的に寒くて暗そうだったからイングランドになった。

ところでこの本もブックオフで中古なんだけど、ところどころボールペンで傍線が引かれていた。あまり繊細でないぶっといインクが波打っていた。普通の人はあまり興味を引かないような専門的な記述に限って、である。きっとどこかの売れないバーの暗い片隅でバーテン見習いの若者がこっそり読んでたんだろうなあとなんて想像し、そいつはちゃんとアイラ島に行けたんだろうか、なんて酔った頭で考えたりしたのであります。
評価と贈与の経済学
内田樹 , 岡田斗司夫 FREEex / 株式会社のぞみ (2013-03-16)
読了日:2014年9月23日
これもKindle日替わりサービスで。僕の中でこのお二人の著者は「なかなか面白くて納得できることを言う頭の良い人だとは思うけど、じゃあ実際僕がそれを参考にして何がどうなるのかと言われると困ってしまう」タイプの人だなあってイメージがある。
僕だって20歳くらいの若者に対して酔って話してたらだいたいこう口調で話してしまってる気はするんだけど。
それでも繰り出されるフレーズは刺激的だし、ちょっとした居酒屋談義で繰り出すとなかなかの武器になりそうなので、ついメモってしまうのだ。
たとえばこういうの↓

ネット上での発言についても、「淘汰圧」は作用するとぼくも思う。嫌なやつの書く切れ味のいい悪口よりも、いい人の書く身辺雑記のほうが、長い期間を経過したあとはリーダビリティが高いから。罵倒とか、「寸鉄人を刺す」的な残酷な悪口って、そのときは刺激的に感じられるけれど、長く読み続けることはできない。読んでいるうちに、こっちの生命力がだんだん衰えてきて、こちらの感受性がだんだん汚れてくるから。最終的に淘汰の基準になるのは、「そのテクストを読むことによって、生きる元気が出てくるもの」と「読むと気分が落ち込むもの」だと思う。(内田樹)

それはさておき、贈与経済と評価経済についてはひとつの考え方の柱としてしっかり認識しておくべきだとは思う。
磯野家の相続
長谷川 裕雄 / すばる舎 (2010-09-21)
読了日:2014年9月23日
日替わりセールで。知り合いが相続で裁判沙汰になってるって話を愚痴ってて、へぇーいろんな問題があるもんだねえと思いつつ身内にお金持ちがいなかったりほとんどみんな元気に生きていたりしてて他人事って思っているんだけど少なくとも話題にはついていけんとなあなんて思っていたところにメール届いたのでポチ。
相続について考えたのは中学校か高校の授業で少し出てきた時以来だと思う。それくらい身内の不幸とは無縁で暮らしてきたからだ。
財産を巡って生存者たちが争うということは不幸に不幸を重ねることだというのがよくわかった。そのために準備をしましょうということも。

しかし。そもそも資産を残すってことはどういうことなんだろう。特に老人の資産を老人が相続するのが当たり前となった時代にそれは社会的にどういう機能を果たすのだろうか。
お金というもが有限であり、それを確保することが人生にとって最優先の課題だという考え方の人間が多数を占める以上、その中で理想を語ったところでどうしようもないのかもしれない。でも本音を言えば誰からも相続なんて受け継ぎたくないし、子孫に相続する面倒からも解放されたい(双方ともそもそも心配する額でもないとは思うけどそれでも)。
弱いつながり 検索ワードを探す旅
東浩紀 / 幻冬舎 (2014-08-01)
読了日:2014年9月19日
立て続けにラジオ番組のPodcastに著者が出演してたので釣られてみた。彼の本にしては珍しく読みやすい。若者をターゲットに↓本なのだろう。彼の主張したいことはとても良く伝わった。僕はこの本を読んだこともひとつのきっかけとして秋のイギリスひとり旅にでかけたといってもいい。50になろうかという僕を揺さぶったのはたとえば下記のフレーズだ。

・ネットは階級を固定する道具
・ひとが所属するコミュニティのなかの人間関係をより深め、固定し、そこから逃げ出せなくするメディアがネット
・環境が求める自分のすがたに、定期的にノイズを忍び込ませること
・ネットは、強い絆をどんどん強くするメディア
・自分探しではなく、新たな検索ワードを探すための旅
・ネットでは自分が見たいと思っているものしか見ることができない
・日本人は「村人」が好きです。〜けれどもぼくは「旅人」でいたい。いや、むしろ「観光客」でいたい
・重要なのは、言葉を捨てることではなく、むしろ言葉にならないものを言葉にしようと努力することです。本書の言葉で言えば、いつもと違う検索ワードで検索することです。
・旅先で新しい情報に出会う必要はありません。出会うべきは新しい欲望なのです。
・情報はいくらでも複製できるけど、時間は複製できない。
・年齢を重ねると、情報収集のフィルターが目詰まりを起こし、新たな検索ワードを思いつかなくなる。ときどきフィルターの掃除をやらねばなりません
・本書で「新しい検索ワードを探せ」という表現で繰り返しているのは、要は「統計的な最適とか考えないで偶然に身を曝せ」というメッセージです


若者ばかりでなく、大人になってからネットにハマった人が読んでも良いのかなと思った。
戦火と混迷の日々 悲劇のインドシナ (文春文庫)
近藤 紘一 / 文藝春秋 (1987-02-10)
読了日:2014年9月14日
近藤紘一さんの本は何冊か読んでたんだけど、緊迫する状況でもどこかCoolでのんびりとさえしてていいんだよなあ、また読んでみようかと検索して見つけたのがこの本。読み進めていくとこれまでとちがう凄まじい内容に仰天してしまった。内藤泰子さんというカンボジアのポルポト大虐殺に巻き込まれた女性の体験に取材して書かれた本だった。
世の中にこれほどまでの理不尽さがあるのかと、平和な日本人からは到底受け入れられない現実が描かれるが、それでも生き抜いてきた内藤さんの強さは一体どこから来たのだろう。聞き手の近藤氏も同様だけど。
色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年
村上 春樹 / 文藝春秋 (2013-04-12)
読了日:2014年9月10日
今のところ村上春樹の最新作なのかな。ハードカバー中古本を一気に読む。
発売当初に言われてたようなグダグダ感、なんてのは微塵も感じなかった。すっかり彼の物語の進行速度に慣れてしまったせいかもしれない。むしろタイトルとはうらはらに色彩豊かなシーンがテンポ良く進んでいく感触が心地よかった。
若かった頃に体験した傷を自ら克服することは大事だと思うけど大変だなと思う。自分自身のことについてはなんでも中途半端に放っておくタイプの人間だからだ。できるだけ「決断」しないようにして生きてきた。かっこつけて決断した時はたいてい失敗する。どうしても方向を決めないといけないときには、既に事態がそうなっている。その流れにそむかず、自分がそれでいいと思えば舵を切る。そういうタイプに違いないので、もしトラウマを置き忘れてきたとしても、どうにかして他の楽しみを見つけてそっち側に進んでしまう生き方をしてきたので、つくる君みたいに過去に向き合って精算していける人間はすごいなあと思う。もちろんいつかはそんな時が来てしまうのかもしれない。
医療詐欺 「先端医療」と「新薬」は、まず疑うのが正しい (講談社+α新書)
上 昌広 / 講談社 (2014-07-23)
読了日:2014年9月4日
村上龍のJMMで長年著者の文章は読んできたし、特に震災以降はTwitterでも毎日彼の発言を目にしているので本も読んでみようかなと思い購入。
「原子力ムラと医療ムラ」「医学会の御用学者」「戊辰戦争の結果東北地方は医療過疎」「日本軍ー厚生省ー国立病院」といった、どちらかといえば彼が日ごろ批判している過激で陰謀論じみた言葉を(たぶん逆説的に)使って医療の実態を知らしめようとした本という印象だった。最後のまとめは混合診療によっていくつかの問題が解決していけるのではとの提言。

僕の働く業界でもあるので、そうそう、なんて頷いたり、そうなんだ、って驚かされたりしながら読み進めた。
でもちょっと分かりやす過ぎないかって気もしたのだ。説明される物語がちょっと良くできすぎてるような。実際そうなのかもしれないけど、まるでミイラ取りがミイラになったような。
靖国神社 (幻冬舎新書)
島田 裕巳 / 幻冬舎 (2014-07-30)
読了日:2014年9月4日
湯島に住んでいた頃、靖国神社まではぎりぎり徒歩圏だったのだけど、4年間で訪れたのは一度きりだった。といっても参拝したわけでもじっくり見学したわけでもなく、ああここがいろいろと話題の場所か、とおいっただけでとりわけ思い入れがあったわけでもない。
それでも時が立つにつれ特にネット界隈でその名前を目にする機会が増え、少しは歴史や経緯について知っておいたほうがよいんじゃないかと考えていた頃に手にした本である。
結論から言えば今までの中途半端な知識で、中途半端な情緒を携えて靖国に賛成したり反対したりしなくてよかった、と思った。本社は意図的にどの立場にも属さず、肩入れしたり反発したりしないよう淡々と経緯のみを述べる格好をとっている。左右どちらの立場であれ、ここ最近最もかけているのはそんな中庸の態度なのだろう。今回二度読みしてみてつくづくそう思った。社会的に論議の分かれる話題に対し、生半可に言い切ることはほんと恐ろしい。
「パレスチナが見たい」
森沢 典子 / CCCメディアハウス (2002-06-01)
読了日:2014年9月3日
日替わりサービスで。ちょうどガザ地区への攻撃が世界的なニュースとなっていたのでクリックしてみた。ちょっと前のレポートだけど今でもあまり状況は変わっていないんじゃないかと思う。もしかしたらもっと悪くなっているのかもしれない。
余談になるが、この頃SNSではパレスチナの悲惨さを訴え、イスラエルの非道ぶりを告発する発言がおおくの共感を集めていた。そればかりか「こういう現実に無関心でいることも戦争に加担しているのです」という発言も多かった。
もちろんそれはその通りなのだけど、パレスチナ側が一方的に被害者なのかと言われたらそんなことはなく、話題のイスラム国とも通じた原理主義者たちを被害者だから正当であると考えてしまうのも少し浅はかでないかと感じたものだ。
何よりも2014年のガザ攻撃はもともと少年誘拐事件をきっかけにSNSを舞台とした双方の市民たちの怒りの応酬がきっかけとなったことを忘れるわけにはいかない。ネットを見て正義感を昂ぶらせ、怒りを拡散する人たちが現場の悲惨さをエスカレートさせ、終わるべきポイントを見誤らせているのもまた現実なのだと思う。
だから無関心でいるべきとは全く思わない。公衆で発言するからにはそれ相応の覚悟をもってすべきだと思うだけだ。そうでないと戦いの神に力をくべるばかりだからだ。
1Q84〈BOOK3〉10月‐12月〈後編〉 (新潮文庫)
村上 春樹 / 新潮社 (2012-05-28)
読了日:2014年8月30日
しばらく没頭していた1Q84の世界もこの巻で終わり。ところでこの文庫本の表紙にちらっと描かれているのはヒエロニムス・ボスの「快楽の園」だと思うけど、僕は1990年にマドリッドのプラド美術館で見たことがある。その数年ほどまえに荒巻義雄の「神聖代」という文庫本を読み、そこに何度も描かれるボッシュの絵の本物を見つけてしまった驚きにその場を離れられなかった記憶がある。とても幻想的なSF作品だった。

なんてことを思い出しながら幻想小説をゆったりと楽しむのもまたよいものだ。
1Q84〈BOOK3〉10月‐12月〈前編〉 (新潮文庫)
村上 春樹 / 新潮社 (2012-05-28)
読了日:2014年8月28日
天吾の父の職業はNHKの集金人なのだが、ちょうどこれを読んでいるころに息子の住むアパートに強圧的なNHK集金人がやってきて、テレビも持っていないのに契約を勝ち取って去っていったのだった。なんでもパソコンにワンセグ機能がついてる、という証言を引き出して強引にキャッシュカードをスキャンしていったのだそうだ。そんなこんなで忘れられないエピソードになってしまった。まあどうでもいい話なんだけど。
1Q84 BOOK2〈7月‐9月〉後編 (新潮文庫)
村上 春樹 / 新潮社 (2012-04-27)
読了日:2014年8月28日
別世界へスリップしてしまう物語は世の中に溢れているけど、小学生のクラスで回し読みした「漂流教室」ほど衝撃を与えた本はないと思う。なんせマンガの舞台と同じ小学校の教室で読んだのだからリアル感は半端でなかった。
1Q84もこの巻あたりからちょっとそんな「ちょっとだけずれた社会」を描いていく。村上龍の「5分後の世界」もそうだったかもしれない。ずーっと昔にテレビで放映されたSF映画「決死圏SOS宇宙船」(いま検索してタイトルを知った)もふと思い出したりした。
1Q84 BOOK2〈7月‐9月〉前編 (新潮文庫)
村上 春樹 / 新潮社 (2012-04-27)
読了日:2014年8月27日
仕事もそこそこに、ちょっとした合間に文庫本を開けては月が2つある世界に没入する2014年の夏である。いよいよ牛河だ。さきがけのリーダーも出てきた。この感覚は朝の連続テレビ小説を見ている感じと似ている。ただしあまちゃん以降のだけど。物語を追いかけるのと同じかそれ以上の情熱で、これはいったい何にインスパイヤされたのか、何に対するアイロニーなのか、とかそんな副次的な読み方もまた楽しかったりするのだ。
1Q84 BOOK1〈4月‐6月〉後編 (新潮文庫)
村上 春樹 / 新潮社 (2012-03-28)
読了日:2014年8月25日
すかさずBOOK1の後編、つまり文庫本でいう2へ。アイディアの元になったと言われるジョージ・オーウェルの1984は数年前にKindleで読んだ。確かに暗いトーンの小説だったが、どこかちょっとノンビリとした雰囲気を漂わすのは主人公のキャラがそのように描かれていたからなのだと思う。こちらの1Q84もちょっとそんな感じだ。
同時にその世界を覆う原理主義的な思想の強固さと、一人一人は悪人ではないみたいなんだけど、なぜか仕方がないからなあといった風情で自由からの逃走を決め込む内部の人間たちの脱力感も共通しているように感じた。
1Q84 BOOK1〈4月‐6月〉前編 (新潮文庫)
村上 春樹 / 新潮社 (2012-03-28)
読了日:2014年8月25日
ブックオフから届いた大量の春樹本、ついに1Q84に手を出した。これまでに読んだいろんな小説の村上登場人物が少しずつ印象を引き継ぎながら出てくるあたりは、きっと古くからの文学のスタイルを踏襲しているのだろう。半分ほどもわからないけど、きっとまた数年後に読み直すと新たな発見を楽しめるのではないかな。もっと小難しい小説かなと思っていたけど、普通に楽しめた。この勢いで行けば文庫本6冊も1週間で読んでしまえるのだろうか。
海辺のカフカ (下) (新潮文庫)
村上 春樹 / 新潮社 (2005-02-28)
読了日:2014年8月24日
上巻を読み終えたとき既に深夜だったのだけど、勢いがついてしまってけっきょく朝まで下巻を読み続けてしまった。明確ではないストーリーが進行したり戻ったり謎が説き明かされたりそのまま忘れられたように放置されたりして、この手の小説を読み慣れていないと戸惑うばかりだと思うのだけど、重要なのは一つ一つシーンが残していく「風景」なのだと思う。その風景、情景、光景、なんでもいいんだけど、それらは読むたびに僕の脳のどこかに刻みつけられ、これからの人生でしつこいくらいに僕の思考に波風を立ててくるのだと思うと、日本のおじさんが作り上げた物語もなかなか侮れない。
海辺のカフカ (上) (新潮文庫)
村上 春樹 / 新潮社 (2005-02-28)
読了日:2014年8月23日
BookOffオンラインで大人買いしたなかでなぜか本書だけが新品だった。時空を越え常識を越えた愛情と暴力の話。そしておそらくは現実に起きた事件のいくつかの要素がそれにまとわりついている。魅力的な人物と理解しがたい人物?とが出たり入ったりしながら不可思議な舞台を見せられているような読書の時間だった。
レキシントンの幽霊 (文春文庫)
村上 春樹 / 文藝春秋 (1999-10)
読了日:2014年8月22日
村上マイブームはじめてずっと長編を読んでいるので箸休め的に短編集へ。1999年にでた文庫本なのでしっかり日に焼けててうまいこと仕上がっている。古本はこうでなくちゃ。
・レキシントンの幽霊
・緑色の獣
・沈黙
・氷男
・トニー滝谷
・七番目の男
・めくらやなぎと、眠る女
どれもこれも読んだ後にもやもやとした印象を残し、その後読者が死んでしまう瞬間まで脳内のどこかに棲み着いてふとした隙にちょっかいかけてくるような、そんな話だった。
「核」論 鉄腕アトムと原発事故のあいだ (中公文庫)
武田徹 / 中央公論新社 (2006-02-01)
読了日:2014年8月21日
2011年に新書で 私たちはこうして「原発大国」を選んだを以前買って途中まで読んでたのだけど、どこかに無くしてしまってそのままになってた。Kindleで探したらこれがあったのであらためて読んでみた。311以前に書かれた本だけど、原爆を落とされた日本が原子力発電にのめり込んでいく過程が描かれており、当時の政治状況と合わせて考えるとなるほどそうだったのかもしれない、と考えさせられた。単純な陰謀論のように誰か特定に悪人が私利私欲や破壊思想をもって日本に原発を並び立てたわけではなく、誰もが今度こそ、という未来のエネルギーに賭けた結果だったのだろう。だけど夢が夢でないと気がついても方向転換できなかったことが最大の問題だったし、それは戦前の領土拡大戦略と大して変わらない。

なんどでも書くけど、僕らが意識すべきなのは「では今僕らが良かれと思って邁進していることだって近未来から見たら原発と同じような夢なのではないか」という問題意識だと思う。
司馬遼太郎が描かなかった幕末 松陰・龍馬・晋作の実像 集英社新書
一坂太郎 / 集英社 (2013-09-18)
読了日:2014年8月17日
日替わりセールで。実はまともに司馬遼太郎の本を読んだことはないのだけど、大河ドラマ以降どうにもヒーロー像が胡散臭く思えてしまってて読んでみることにした。
龍馬も晋作もヒロイックな物語の多くは戦後昭和の時勢に応じて創作されたファンタジーだったと書かれている。歴史文学で歴史を学んだ気になる怖さを感じた。

経営者たちと付き合っていると過去の英雄たちに学ぶ、という話を数多く耳にするが、近代日本のヒーロー像の多くは司馬遼太郎が補強しクリエイトした英雄像を下敷きにしている場合が多いと思う。あるは彼の著作をベースにした映画やドラマかもしれない。

彼らが素晴らしい人格を持ち、非凡な能力を発揮したり勇気を示したりするのは「そう見えるように描かれたからだ、なぜならそうすればより多くの国民に受け入れられたからだ」という認識をしっかり持って臨まない、ちょっと変な歴史観をベースに現実離れした方向に会社や人生を導いてしまいそうな気がしてならない。
第一次世界大戦 (ちくま新書)
木村靖二 / 筑摩書房 (2014-07-07)
読了日:2014年8月17日
今年は第一次世界大戦勃発から100年ということだが、ほとんどその実態を知らなかったので買って読んでみた。Session22にゲスト出演してた著者に興味を持って一気に読んだ。

20世紀初頭の国際社会では一等国と二等国とが厳然と分けられており、遅れてきた帝国主義のドイツはどうしても一等国の地位が欲しかったこと、イギリスとドイツはお互いにもっとも重要な通商関係だったこと、開戦時はまさか世界大戦になるなど誰も考えていなかったことなど、初めて「総力戦」の概念が生まれ敵国の殲滅までを目標に掲げたのはこれが最初だったことなど・・・知らないことだった。

また、第二次世界大戦後にソ連が日本兵を抑留し長期間シベリアで働かせたことは常識はずれなできことだと思っていたけど、「ロシア兵捕虜は農業と前線での陣地・道路など土木工事に、西欧諸国の捕虜は工業で使うというのが、ドイツの基本的方針であった。」と書かれてあり、少なくとも第一次世界大戦時はどこ国も当たり前のように行っていたことなど。

しかし現代日本でもっとも思い出すべきことは、この戦争が勃発時から参戦国の国民たちを大いに興奮させ、絶大な支持を集め、停戦すべきタイミングが訪れたときも各国の指導者は自国の国民の支持と期待を裏切るわけにはいかないという背景でお互い悲惨な状況に至るまで戦争が継続された、という事実である。

つねづね「悪意に満ちた、あるいは頭の弱い政治家や軍人が国民を無視して」戦争を始めたり終わらせられないのだとと教わってきた。多くのメディアもそういた正義感を盾にとにかく国民が声を上げれば戦争を防ぐことができるのだと主張する。

だが過去の歴史はそうともばかりも言えなかったという。まず冷静になるべきは国民であるべきだ。悪の帝国が自国を責めてくると危機意識を高め、勝利に酔い、弱腰の政府を攻撃する人たちこそが戦争をはじめ、悲惨な状況を生んだのだという歴史を踏まえるべきだと思った。
偽満州国論 (中公文庫)
武田徹 / 中央公論新社 (2010-06-05)
読了日:2014年8月13日
武田徹氏の「暴力的風景論」を読んだ後、著者のTwitterでこの本について見かけたのでダウンロードした。父が満州生まれだという環境からその国について少し知っておきたいと思ったのだ。知らないことばかりだった。書かれていることが全て事実かどうか確認することはできないけど、もしそうだとしたら中世以降西へ西へと開拓を進めてきた人類の遺伝子が日本にも感染したお祭りだったのだろうと思った。ただ少しばかり遅すぎたのと、観念的に過ぎた。何よりも出口戦略を持たなかった。いつものように細部では良い仕事をしたのだろうけど。あと架空対談はちょっと面白かった。

僕らのやるべきことは過去の政策を断罪することではなく、今現在僕らが偽満州国的な何かを作っている最中ではないかと疑ってみることだと思う。
教養としてのプロレス (双葉新書)
プチ鹿島 / 双葉社 (2014-08-06)
読了日:2014年8月10日
プロレスは小学生以来ほとんど見てないけど、session22で聞いた著者の考えに賛同したりして購入。

プロレスという言葉は「八百長という意味で使うのではなくガチな感情をどうビジネスに使えるかってこと」と定義し、さらに「人前に出すものとして恥ずかしくないものをみんなで真剣に世に放つこと」「世の中に響かせようとすること」と意味づけする。

それに2014年の世情を絡めながら警戒に展開していくので楽しく読めた。

そう、僕らがメディアやネットを通じて見聞きする世界は「プロレス」なのだ。
善玉や悪玉は「設定」されたキャラでしかない。
でも彼らはビジネスとして真剣に演じている。
僕らはそれらを愛でながら、たとえば人生とは何か、なんてことにもふと思いを馳せたりするのだ。それが現代社会におけるメディアリテラシーの確固たる軸なのだろう。
プロレスに興奮し、夢を見るのは楽しいが、演じられた世界を頭から信用して平静を失ったり、逆に「どうせ八百長」とかいってニヒリズムを演じるのはまだまだ大人ではないってことなのだろう。
夢、死ね! 若者を殺す「自己実現」という嘘 (星海社新書)
中川 淳一郎 / 講談社 (2014-07-25)
読了日:2014年8月10日
Twitterを通して垣間見た著者の考え方とか表現がわりと好きなもので買ってみた。最初こそタイトルのような刺激的な単語が連なるのだが、次第に仕事論に収斂していく。それもわりとまともな。大人になって仕事を始めるといろいろ見えてくる「現実の情けなさ」をこれでもかと描きながらも、若者たちへの応援演説になっていくあたりに著者の性根の良さが伝わってきて、ちょっとほんわかなりましたよ。
夢を実現し、なりたい自分を掴み、本当の自分を見つけることが若者たちの目標と言われて久しいけど、実際にそれで満足できる人生をずっと送ることのできる人間なんてほとんどいない。少なくとも大人になりたてのころからそんなことにこだわっていたら失敗するか自滅するかどっちかだ。
だから夢なんて早々に諦めて目の前の仕事を片づけていくことで、そのうちやりたいこと向こうからやってくる。とまあ僕らが居酒屋で若者に演説してるわけだ。むかしはそんな話聞かされてキレてたのにだ。
ねじまき鳥クロニクル〈第3部〉鳥刺し男編 (新潮文庫)
村上 春樹 / 新潮社 (1997-09-30)
読了日:2014年8月8日
こんなに長い小説をイッキ読みしたのも久しぶりだ。やっぱり牛河が秀逸だ。それとパソコン通信が懐かしかった。読み終えたときにはもう普通の生活には戻れない気がした。そんなこともなかったけどその時はそう思った。
ねじまき鳥クロニクル〈第2部〉予言する鳥編 (新潮文庫)
村上 春樹 / 新潮社 (1997-09-30)
読了日:2014年8月7日
もう止められない小説への没入生活。登場人物がどんどん面白くなっていく。他の作品とのクロス出演が少しずつ分かりはじめたのも面白くなってきた。加納マルタ・クレタ姉妹は最高だ。もしこの作品が映画化されたりしたらやっぱり叶姉妹が演じてしまうのだろうか。それはちょっと勘弁して欲しいとか下らないこと想像しながら読んでしまった。
ねじまき鳥クロニクル〈第1部〉泥棒かささぎ編 (新潮文庫)
村上 春樹 / 新潮社 (1997-09-30)
読了日:2014年8月6日
だんだん仕事が手につかなくなってきた。暇を見つけると文庫本を開いて物語を追いかける夏となった。作品を重ねるごとに不思議な人物がいかにも知り合いにいそうな実感をまとって次々登場してくる。満州での暴力描写は今までにない世界だった。ちょうど平行して満州に関する本を読んでいたりしたので頭の中のリンクがスパークしてそれこそ仕事どころではなくなった。
ダンス・ダンス・ダンス(下) (講談社文庫)
村上 春樹 / 講談社 (2004-10-15)
読了日:2014年8月5日
今回も上巻を読み終えた後いきおいで朝まで徹夜して下巻を読み終えてしまった。仕事柄あちこちのビジネスホテルに泊まるけどいまだかつて不思議な体験もなければ受付の女性と仲良くなったこともない。修行が足りないのだろうか。やれやれ。
ダンス・ダンス・ダンス(上) (講談社文庫)
村上 春樹 / 講談社 (2004-10-15)
読了日:2014年8月4日
まだまだ続くニワカハルキスト作戦。羊シリーズだけど今まででいちばん軽い作風だと思った。悪い意味ではなく読みやすく考え込ませないという意味で。ユミヨシさんは魅力的だ。主人公の僕は年齢を重ねたせいかずいぶんおじさんになってきた。
羊をめぐる冒険(下) (講談社文庫)
村上 春樹 / 講談社 (2004-11-16)
読了日:2014年8月3日
半年ぶりに再読したのだけど、この本の後に出された村上作品を読んでしまった後に読むとまた別の文脈が立ち上がってくるのが面白かった。当然のことだけど著者は自分が未来に各作品のことなんて念頭に置いてたわけではないので、想定された読み方ではないのだけど、作品世界というのは作者が生み出した後も一人歩きしていくのだろう。相変わらず成長せずいつまでも坊やのままで許されるのは作品の中の「僕」だけなのだ。
羊をめぐる冒険(上) (講談社文庫)
村上 春樹 / 講談社 (2004-11-15)
読了日:2014年8月2日
ここまで何冊か村上春樹作品を読み、こうなったら今年は彼の作品をコンプリートしてしまおうかと思いブックオフオンラインで大人買いしたのだった。けっこうな冊数となった。これまであまり中古本を買わなかったのは、作者へのちょっとしたリスペクトというか金銭的支援みたいな気持ちだったんだけど、ここまで世界的に有名なベストセラー作家に対してはそんな気遣いも不要かなと思って。それと彼の作品は黄色く黄変したページで読むのが最適だと思ったからだ。といっても手元に届いたこの本に関して言えば2009年の第16冊だった。だから黄色いことはない。

この記録をつけるためにざっと再読しようとしたのにすっかり熟読してしまった。世の中に溢れる続編やパート2やリローデッドやリブーテッドの中でも羊シリーズはとても上手くいってる気がする。
世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド 下巻 (新潮文庫 む 5-5)
村上 春樹 / 新潮社 (2010-04-08)
読了日:2014年8月1日
あっという間に上巻を読み終わり寝る間も惜しんで下巻へ。この小説が出されたのは1988年となっている。ちょうど僕が大学を出て実社会に揉まれていた頃だ。仕事ばかりしていたので(たいした実績も出してなかったのだが)テレビや新聞をほとんど見てなかったし情報源と言えば営業車で聴いてた昼のAMラジオくらいだった。だからこの本のことは何となく広告で見たことがある気がしたけどどんな話なのかまったく知らなかったし興味もなかった。次第にバブルの様相を強めていた世の中で、どいつもこいつも浮かれた話ばかりで小説なんて読む暇がないように思えた。それでもベストセラーになったんだから凄いなあと思う。そしてその後創られたあらゆる小説やゲームやアニメや物語に影響を与えたんだろうなあ。もう少し歳を取って記憶が薄れたら再読しようと思う。その時の時代背景や僕の周りの環境でまた違った色合いの物語として読めるんじゃないかなと思う。
世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド 上巻 (新潮文庫 む 5-4)
村上 春樹 / 新潮社 (2010-04-08)
読了日:2014年7月28日
上下巻とも京成大久保のブックオフで買ったもの。1997年第25刷。同じく茶色い文庫本となっている。文章はとても読みやすいのに描かれる世界は本当に特異だ。来る日も来る日も見てしまう魅惑的な連続夢のようだ。古い時代のビデオゲームのようだ。それで太った若い女は魅力的だ。
1973年のピンボール (講談社文庫)
村上 春樹 / 講談社 (1983-09)
読了日:2014年7月25日
京成大久保のブックオフで購入。1983年に第1刷、この本は1992年の第25刷となっている。つまり印刷されてからもう22年も経っている本だ。だからページの周縁部は黄変している。めくると図書館の古い匂いが鼻を刺激する。電子書籍で本を読む機会が増えてきたけどやっぱり紙の本でなければ味わえないものってあるんだなあ、なんて思いながら読んだ。
ノルウェイの森を先に読んでいたので直子が出てきてちょっとびっくりした。それにしても双子の女の子としばらく過ごせたんだからもう人生それで十分じゃねえかこのやろう。
教科書に載ってないUSA語録
町山 智浩 / 文藝春秋 (2012-10-05)
読了日:2014年7月20日
たしか紙の本でも買って持ってると思うんだけどKinle日替わりセールで安かったので買ってみた。iPhoneアプリで空いた時間にでも再読しようかなと。実際に読んでみたら紙の本でも買ったことはなかったみたい。でもPodcastとかで聞いた話が多かったので、ちょっとした復習になった。
風の歌を聴け (講談社文庫)
村上 春樹 / 講談社 (2004-09-15)
読了日:2014年7月17日
暴力的風景論で取り上げられていたけど未読だったのでついで買いしてみた。これまで読んだ村上春樹作品はノルウェイの森だけだと思う。いやあと数冊は読んでたっけ。でもそんなもんだ。まずはデビュー作から読んでみるかなと軽い気持ちで読み始めたのだけど、これがとっても面白くて。もっとおどろおどろしい本ばかりを書くのだと思っていたからかな。書いた本人はあまり気に入ってないようだけど。
知の英断 (NHK出版新書 432)
ジミー・カーター , フェルナンド・カルドーゾ / NHK出版 (2014-04-09)
読了日:2014年7月14日
新潟出張中に紀伊国屋で平積みされてたのを購入。著者の前作「知の逆転」を昨年読んでたいそう喚起されたのでこちらも期待して読み始めた。まあ面白かったのはそうなんだけど、前作に比べるとあまり深みを感じることができなかった。なんだかスーパーヒーローたちがチームを組んで地球を救う、みたいな感じだったせいかもしれない。たしかにそういう側面もあるだろう。だけど。たとえば「先進国が途上国に救いの手をさしのべる」みたいな感じがどうしても気にくわない、という感覚なのです。
クラウドソーシングの衝撃 (NextPublishing)
比嘉 邦彦;井川 甲作 / インプレスR&D (2013-06-21)
読了日:2014年7月13日
日替わりセールで。いまのサーバー運営はいつまで夫婦二人でやれるんだろうという不安もあって興味があったのだ。なるほど仕組みについてはだいたい理解できた。実際に代表的なサービスにもサインアップしてみた。
それでもどこか引っかかるのは、労働問題という観点だ。企業中心社会のサブシステムとして機能しているうちには、リソースの少ない企業と暇を持て余している技術者同士の幸福なカップリングとして機能するかもしれないけど、もしこのシステムが主流になってしまうとデジタル奴隷システムみたいな悪しき方向に発展してしまわないかちょっと心配になった。
暴力的風景論 (新潮選書)
武田 徹 / 新潮社 (2014-05-23)
読了日:2014年7月3日
新潟の紀伊国屋で見かけて購入。まえがきを読み始めて3秒でこれは、と思った。僕にしては珍しく2回、精読した。今三回目を読み終えたところだ。ここでいう風景とは気分であり、世界観であり、物語だという。もちろん実際その場所にある風景も含まれる。著者はそれぞれテーマにした事件の現場に赴き風景を見ながら考える(私の育った八代駅前もそこに含まれる)。そうして関係者の目線に立って初めて見えてくるあれこれ、というのは確かにあるはずだ。

文中何度も村上春樹の著作が引用される。僕はほとんど読んだことがなかったのでちっとも分からなかった。それでも何だか面白そうだと感じ、この後半年以上、村上作品を大人買いして読み尽くすという日々が始まったのだけど、それもこの風景論のおかげだ。
忘れられた日本人 (岩波文庫)
宮本 常一 / 岩波書店 (1984-05-16)
読了日:2014年6月30日
たぶんラジオか何かで紹介されてAmazon検索して買ったのだと思うけど、詳しくは忘れてしまった。最初のページをめくるまですこし敷居が高く感じたけど、いざ読み始めるとぐいぐいページが進んでしまった。
昔の日本の田舎にこんなにも面白い話が転がっているとは驚きだった。全員一致の民主主義的手法で村の決定がなされ、政治もそれを尊重していたこと、男尊女卑の陰に隠れて女性たちも楽しみを持っていたこと、今以上に国内旅行を頻繁にしていたこと、若ければ男も女も諸国をわたりわりと自由奔放に生きることが許されていたことなど、歴史の本やテレビの時代劇などでは紹介されないさまざまな物語に驚く一方だった。
他人を攻撃せずにはいられない人 (PHP新書)
片田 珠美 / PHP研究所 (2013-11-15)
読了日:2014年6月28日
Twitterから誰かのブログ書評を経由して。ちょうどこの本を読んでいる時に、まったくこの中に出てくるような男とその被害者の話を延々聞かされる事態に陥っていたのでおそろしくリアルに読めたのだった。

たとえば、

・攻撃欲の根底に潜んでいるのは、たいてい、支配欲である。

怖いのは攻撃している本人がそれを自覚していない場合だと思う。
そしてこういうセリフで合理化するのだ。

・友達同士の間では、何でも言ったほうがいい」
「今日は無礼講だ」という場ほどおっかないことはないが、まさに上記の台詞を耳にしたら貝になった方が得策だと信じている。

↓はネット上に散見する態度である。
・相手に罪悪感を抱かせるうえで何よりも有効なのは、自分が被害者のふりをすることである。

僕はとにかく何でも自分が被害者だと主張する人間の言葉は聞き流すことにしている。相手にするとたいてい痛い目に遭うからだ。

↓たしかに冷たく表現するとそういうことだろう。

・なぜ他責に走るのか。それは「すごい自分」という自己愛的イメージと現実とのギャップを、自分では埋められないために、他人のせいにすることで万能感を維持しようとするからであ1274


だけど。僕はこの著者の結論には同意しない。
「他人を攻撃せずにいられない人」は説得不可能だから近づくな、できるだけ距離を置け、という結論にである。

世の中なんでも程度問題だと思っている。攻撃せずにいられない人にだってレベルがあるはずだ。ではどこで線引きすべきなんだろう。どこからをサイコとして遠ざけるのだ?そんなことは無理だ。てかそんなことばっかり考えていたら自分がサイコ扱いされ始める。

けっきょくは自分のスルースキルを上げ、期待に添えずバカでゴメンね的な態度をマスターし、そんなことにかまけてないで他にもっとやるべきことを優先した方が良いと思うのだ。
成長のない社会で、わたしたちはいかに生きていくべきなのか (一般書)
水野和夫 , 近藤康太郎 / 徳間書店 (2013-10-23)
読了日:2014年6月21日
Amazonに勧められて購入してみた。ほぼ僕と同世代で朝日新聞記者の近藤氏が経済学者水野氏に話を聞くという形式の本、中身は何冊か読んだ水野氏の理論をもっと分かりやすく語るという感じだけどそれ以上に近藤氏のツッコミが面白かった。
僕も成長さえ続ければどうにかなる、という思い込みやいろいろまずいことになってきた、という実感を持っている。いうなれば「まだ背が伸びないと負ける!」って思っている大人、みたいな無理感を感じてしまうのだ。大人になったのだから肉体的成長より精神的な成長とか、ほかにもっとやることあるだろ、と思っている人間なのでわりと頷きながら読めた。
邂逅
御厨まさと / goodbook出版 (2014-05-29)
読了日:2014年6月20日
知り合いに読んでみたらといわれAmazonで購入した。世の中にはさまざまな本が溢れている。最近だとネットには無料のテキストがたくさん転がっているのだから、ちょっと勉強したり、暇つぶしくらいだったらお金を出してまで本を買う意味は薄れたはずだ、と主張する意見があることは知っている。でももっとも違うのはそこに「編集者」であったり「発行人」といったプロが介在しているという安心感だ。もちろんとんでもない主張をする本もたくさん溢れているけど、それだっていくつかのハードルを越えて出版されたものだ。
この本について何か書くことはしないが、僕が痛感させられたのはそういうことだ。
青天の霹靂
劇団ひとり / 幻冬舎 (2013-08-23)
読了日:2014年6月16日
陰日向に咲くが面白かったし映画も見ておきたかったのでついで買い(ダウンロード)した。陰日向に咲く、がとても面白かったのでこちらにも期待したのだけど、あれっ?って感じで肩透かしに終わってしまった。なんだかな。
ペンギンが教えてくれた 物理のはなし (河出ブックス)
渡辺 佑基 / 河出書房新社 (2014-04-14)
読了日:2014年6月13日
これもsession22で聞いたので。野生動物たちにバイオロガーを装着し、彼らの生態を解き明かす科学者のおはなし。人間が思っている以上に野生動物たちはこの地球をめいっぱい利用して生きていることが伝わってくる。それも面白いけど、自分に縁のあった研究のために世界中を飛び回り、様々な国の科学者たちと交流しながら化学的成果を上げていく著者の人生により強く魅力を感じた。読んでいるこちらが若返った気さえした。
大学生の息子に読んどくといいよと下宿に置いてきたけど、読んでないだろうなあ。
陰日向に咲く 幻冬舎文庫
劇団ひとり / 幻冬舎 (2008-07-31)
読了日:2014年6月6日
これも日替わりで。もちろん芸人としては知ってたけど著作を読んだのはこれがはじめて。読後感は「やっぱり天才ってのはいるもんだなあ」であった。細かなところはまだまだこれからってところもあると思うんだけど、じゃあお前これ書いてみろって言われたらまったくもってスタートラインにすら立てない自信がある。他に才能がなければこの道一本で食えたんじゃないかなって気がした。その意味で持ちすぎる悩みってのもあるのかも。
うたのしくみ
細馬 宏通 / ぴあ (2014-03-18)
読了日:2014年6月2日
session22でひこうき雲の聴きながらこれはすごいとその場でオーダー。本が届いてからは紹介される楽曲をYouTubeで検索し、リストを作ってそれを聴きながら読んだ。
評論というのは奥が深いものだなあ、というのが読みながらの感想だ。
僕の音楽評論像はレコードを買ってくると歌詞カードの1ページ目にアーティスト賛美が延々と書き連ねられている文章、というイメージまたは小難しい音楽雑誌にできるだけ分かりにくいキーワードを鏤めてキミタチまだまだだねって主張を前面に押し出しただけの文章、てなイメージだった。
でもここに描かれた評論は音楽的な知識を背景にとても納得の得られる適確かつ詳細、そして目から鱗の連続だった。
こんな人が飲み屋を経営してカウンターにいたりしたら毎日通っただろうなあ。
写真がもっと上手くなる デジタル一眼 撮影テクニック事典101
上田 晃司 / インプレス (2012-03-09)
読了日:2014年5月30日
日替わりセールで。iPadminiで読んでみる。こういう本はPaperWhiteだとぜんぜん読めない。写真に関してはいろいろ本を買ったりもしたけどけっきょくよく分かんないやって放り投げてしまうことが多いのでして、この本もそんなかんじでざっとしか読まなかったんだけど、でもサブリミナル的に効いてくるはずだと信じていたりもするのです。つまりお布施です。
東京タクシードライバー
山田清機 / 朝日新聞出版 (2014-02-07)
読了日:2014年5月21日
ちょっと前にSession22で著者のインタビューを聞いて。いやあ面白かった。あまりタクシーを利用しない方だと思うけど、たまに出張先などで乗るとけっこうな確率で面白い話を聞かせてくれる。だけど運転手自身の物語を聞かせてくれた人は数人しかいない(間違いなく興味深い話だった)。
まるで一級の短編連作映画をみているような読書体験となった。最後に読んだばかりの宮本常一「忘れられた日本人」が出てきてちょっと驚いた。次にタクシーに乗る機会が待ち遠しくなった。そういえば僕にもタクシーの運転手していた叔父さんがいたはずなんだけど、今ごろどうしているんだろう。
人間って何ですか? (集英社新書)
夢枕 獏 , 池谷 裕二 / 集英社 (2014-04-17)
読了日:2014年5月21日
ラジオ版学問のススメでインタビューを聞いて。夢枕獏が池谷裕二、佐藤勝彦、岡村道雄、長沼毅、島薗進、窪寺恒己、八代嘉美、ビートたけしといった各界の著名人にインタビューしていく。テーマは人間とは、生物とは、意思とは何か。帯には「解き明かす!」と書いてあるけどもちろん最終的な結論を出した人はいない。すべて「私はこう思う。こう定義したい」という表現で終わる。だからこそそれが人間なのだと著者はまとめる。今回再読したけど、何回読んでも楽しめる本だった。
失敗の本質
戸部 良一 , 寺本 義也 / ダイヤモンド社 (1984-05-31)
読了日:2014年5月17日
大東亜戦争における諸作戦の失敗を組織としての日本軍の失敗としてとらえ直し、現代組織にとっての教訓、反面教師として活用しようという狙いの本。結論としては「平時はうまく機能したが危機においては組織的欠陥を露呈した」というものだ。本書が書かれたずいぶん後に起こった311に対しても、日本の官僚組織は全く同じ対応をしたことを僕らは既に知っている。
コンティンジェンシープラン(不測の事態に備えた計画)を持つことが「縁起でもない」ととらえられてしまい、体面や人情を重視してしまう硬直的封建的なエリート組織の問題は敗戦後も温存されたのである。

プロジェクトX的な「困難と思えたことを一致団結し寝食を忘れて突破する力」ばかりを賞賛し、どう終わるのか、何を得るために戦うのか、それを得た後はどう維持するのか、といった出口戦略についてはあまりに楽観的というか先送りしてしまう性格はいまだに引き継がれている。勝てば何とかなるさ、負ければすべてがお終いだ、という性格は個人的に嫌いではないけども、集団として機能した場合悲惨な結果を招くことは目に見えている。それでも「先の大戦で戦った英霊」だとか「素晴らしい民族性」などと自画自賛しているうちはずっとこんなことを続けて行ってしまうのではないか、と少しばかり暗い気分になってしまった。

だけど失敗の分析に際しては徹底的にロジカルなものではならない。時間が経ち、感情がおさまり、当事者たちが死に絶えた後で初めて共有できる種類の分析もあるはずだ。下手な陰謀論や「目的は正しかったが運がなかった」などの慰めの感情論をうち捨て、過去をロジカルに分析することでしか次なる問題解決には役に立たないのだと確信した。
「俺は聞いてない!」と怒りだす人たち
榎本 博明 / 朝日新聞出版 (2013-02-27)
読了日:2014年5月11日
日替わりサービスで、つい。雨の連休だもの。タイトルはちょっと扇情的だけど中身は案外しっかりしていた。日本的組織の問題点を論理的に指摘している。僕はここのところずっと組織で働いていないけど、仕事相手は組織である場合が多いので、なるほどたしかに、と頷く場面も多かった。

たとえば、

・「職務中心」でなく「職場中心」で動くといったところが、私たち日本人にはある。

というのはなるほど、と思った。目的志向ではないのだ。自分の仕事環境が心地よいことだけを目的に仕事しているんじゃないかって人を多く見かける。社内での立場が、ばっかり言う人とか、自分の上司のことばかりを考えて発言する人とか。政治家だってそういう人が多い気がする。


下記はネットで論争している人たちを思い起こさせる記述だ。

・根底にある問題は、意見と人格を切り離せない感受性といってよいだろう。意見が対立すると、まるで敵対しているかのような思いに駆られてしまう。意見を否定されると、自分を否定されているような気がしてしまう。だから意見の違いが表面化することを怖れ、言いたいことも言えなくなる。思うことも言わずに、なんとなく一体感の中に漂っている。

関係ない話になるけど僕は「罪を憎んで人を憎まず」という言葉を実践できてないのが今の日本の根底にある問題だと思っている。他人に対する期待が高すぎる反面、裏切られたときの落胆も激しいと言うことだろう。たいていそういうときにこの本のタイトルの発言が切り出されるのだ。
2ch、発言小町、はてな、ヤフトピ ネット釣り師が人々をとりこにする手口はこんなに凄い ネットで人々をとりこにする40の手口 (アスキー新書)
Hagex / KADOKAWA / アスキー・メディアワークス (2014-04-10)
読了日:2014年5月3日
著者のブログ記事からまんまと釣られてみた。Twitter界ではすこし落ち着いた感があるけどFacebook界では相変わらずおっそろしいネタやデマが平然と流されてくる。それ10年前に見たよ、的なものが多いことから察するに「ネット慣れしてない」「純粋で良心溢れるおじさんおばさん」が主なターゲットになっていることがわかる。
できればそんな方にもこういったネットの裏側で密かに釣り師を演じてみたり、釣られたふりして盛大に釣り上げることに時間を費やす人たちのオモシロ話を読んで欲しいなと思ってみたりもする。まあ実害ないうちはどうでも良いんですが。
遺跡の声 (創元SF文庫)
堀 晃 / 東京創元社 (2007-09-28)
読了日:2014年5月3日
渚にてを読了したら「こんな本をどうですか」といわれその場で購入、一日で読んでしまった。やっぱSFはいいな。特に日本のSFはどういうわけかこの頃すごかった。そのスケール感が世界レベルだった。エネ放題論に対する答えだと思う。節約の心は文明を発展させるのだ。
バビロニア・ウェーブ (創元SF文庫)
堀 晃 / 東京創元社 (2007-02-23)
読了日:2014年5月2日
一日で同じ著者の「遺跡の声」を読んでしまい同じくKindleに薦められた他の作品をてことで。ほんとうもうこういうの、大好物。文明批判、経済批判にもなっている。
渚にて 人類最後の日 (創元SF文庫)
ネヴィル シュート / 東京創元社 (2009-04-30)
読了日:2014年5月2日
5月の連休はSNSをやめて読書しようと思っていた。だったら古いSFを読もうと思いついてこの本を選んだ。名作なのに読んでなかったはずなので。
昔は外部被曝とか内部被曝とか区別ついてなかったし低線量被曝だとかそんな単語を知らなくても物語を楽しめたのだなあなどと余計なことを考えながらも静謐で美しい語り口に酔った。この手の物語はこれから何かあるごとに脳裏に蘇ってくるのだと思う。たしかに名作だ。
ところで現実である21世紀の日本にこの物語のような静けさはまだない。安心して良いものかどうか僕にはわからない。
ひらめきスイッチ大全
サンクチュアリ出版 / サンクチュアリ出版 (2014-02-17)
読了日:2014年4月30日
これもKindle日替わりサービスで。安い分テキストだけのイラストなしバージョンだった。まあKindleで読む分にはそちらの方がいいのだけど。iPhoneで暇つぶし的に読んでみました。たまにはこういうのもいいか。
プロの資料作成力
清水 久三子 / 東洋経済新報社 (2012-06-07)
読了日:2014年4月30日
あんまりこういうビジネス書は買わないんだけど、Kindleの日替わりセールに誘われ。最近プレゼンする機会がまた増えてきたのだけどマンネリ気味なので何か刺激が欲しいなあと買ってみた。どちらかといえば僕よりも若い人たちが読むと良いんじゃないかな。僕くらいの年齢になるとしっかりと完成したプレゼンよりも常軌を逸したやりかたを期待されたりするので。でも基本に戻るのはよいことだ。
フラットデザインの基本ルール Webクリエイティブ&アプリの新しい考え方。
佐藤 好彦 / インプレス (2013-11-22)
読了日:2014年4月9日
iPhoneやiPadのiOSがフラットデザインに一新されたので、その発想とはどこからきたのだろうと思い、読んでみた。ようするに「これ見よがしでちょっとしつこい」方向に進んできたソフトウエアのデザインを見直して、「シンプルで機能的がオシャレ」という方向にもっていこうってことかなあと理解した。
僕もソフトウエアを作っている側(発注しているだけで自分では組まないけど)の人間なので流行は押さえておきたいと思う。流行である以上これもまた飽きられ、次の流行に向かっていくのだろうけど、こういった歴史を押さえておくことで過剰に敏感になり振り回されることなく仕事できるのならそれにこしたことはない。
インターネットのシロサギ達~ネットの嘘と危険から貴方の身を守る方法~
蓮見あつき / 蓮見あつき (2014-03-21)
読了日:2014年4月7日
日替わりセールで購入、その日のうちに読んだ。
ちょうど歯科医師会に頼まれてネットとのつきあい方という講演を終えたばかりだったので、もう少し前に読んでおけばいくつか面白い逸話として使えたのになあと思えた。知っているつもりで知らなかった裏事情もいくつかあり、ある程度は社会人として共有すべき事情ってのもあるなあと。
自動車免許を取得して初めて公道に出ると、世の中には悪い奴も良い奴も居るもんだなあと気づく。
インターネットには今のところ講習も免許もないが、やはりあちこち整備されてない落とし穴や意図的に近づいてくる当たり屋がいることも事実であって、だからといってネットはすべて危ないから近づかないでおこうといった態度に逃げることなく、きちんと向き合って運転していくことが必要なのだと思う。

そのための近道は「警察24時」みたいな番組をたまに見て悪い人たちの実情に近づくことも悪くない方法だとは思う。
自由からの逃走 新版
エーリッヒ・フロム / 東京創元社 (1965-12)
読了日:2014年4月3日
読了するまで9ヶ月も掛かってしまった。といってもずっと読んでいたわけではなく積読期間が長かっただけでいざ読み始めたら1ヶ月くらいで最後まで読んでしまった。
近代人にとって「自由」という概念が二重の意味を持つことを解明した本。
すなわち伝統的権威から解放され「個人」となった近代人は同時に「孤独」「無力感」「不安」に悩まされ始め、その結果、新しい束縛へと自らすすんで向かうようになったと喝破する。その念頭にあるのはヒトラー、ナチズム、ファシズムだ。
だが2014年の日本に置き換えても十分通じてしまう内容となっている。
権威主義、シニシズム、資本主義、マーケティング、評価経済、ブラック企業問題、民族差別・・・さまざまな問題がナチス崩壊後も変わらず続いていること、あるいは再生しはじめていることを感じてしまい、アンダーラインと書き込み多数となった。定期的に再読しなければならない本だと思う。
お宝発掘!ナンシー関
ナンシー 関 / 世界文化社 (2013-08-20)
読了日:2014年3月23日
ナンシー関は昔からずっとぼくら夫婦の大好物だ。
もし彼女が生きてたら佐村河内事案とか小保方事案をどう料理するかを予想し合うのが今年の僕らの夕食の話題だったりした。本書を読んで懐かしいな、と当時を思い出すと同時に、今でも基本は変わってないなあと気づいたりする。テレビのパワーはずっと落ちてしまった気はするけど。
偶然の科学 (ハヤカワ文庫 NF 400 〈数理を愉しむ〉シリーズ)
ダンカン ワッツ / 早川書房 (2014-01-10)
読了日:2014年3月23日
アキヨドの有隣堂で手にとって買った後2ヶ月近く持ち歩いて読了した。「常識」について理系っぽく考察した本。「常識」とは問題解決の際とても有効なケースもあるが、しかしそれを使うべきでないシーンも多々あると説く。新聞の投稿欄やネットを見てると「こういうのは非常識だ」「常識で考えれば分かりそうなものを」みたいな表現を多く耳にする。取引先と雑談してても、社会問題に話題が及べばたいてい「ほんとに○○は非常識だ」といった結論に落ち着くものだ。
だが常識とは何かをこうやって理詰めに考えていけば、常識とか直感といって手法の危うさに気づく。皆が何を常識と考えているかを知ることは有用だとは思うけど。
面白かったのでたくさんの傍線を引きながら読んた。
ところで本書のタイトルを「常識の科学」としなかったのはなぜなんだろう?
よくわかる日本経済入門
塚崎 公義 / 朝日新聞出版 (2013-04-29)
読了日:2014年3月10日
日替わりセールで。君の専門は?と聞かれて「いちおう経済学部を出ましたが」とは答えてみるものの、学生時代は経済原論で挫折したほどの実力なので専門だと言い切る自信はまったくない。それでも長く会社で働いたり経営してみたり、あるいは本やテレビ、ネットの知識で補強しながらどうにか会話に困らぬ程度には追いつけてきた気がしていた。
本書は「当然知っておくべき日本経済にについての常識」をまとめた本だけど、それでも「えっ」と唸る場面がたくさんあったりしてまだまだダメじゃん俺、と。
断片的な知識や扇動的なニュースばかりに接していると全体像を間違う怖れがある。少し時間があればこういった本で基礎的な部分を補強することはとても有効だと思う。

たとえば以下などはついメモしておきたくなる。

・個々の人が勤勉に働き、倹約することにより、経済の低迷と失業の増加という結果が生じてしまうのです。このように、それぞれはよいことをしていても、全体としては悪い結果になることを「合成の誤謬」と呼びます。

・日本に定住している外国人は206万人で、人口の2%弱にとどまっています。
・外国に住んでいる日本人も118万人で、人口の1%弱です。

・日本の平均的な家計は、人数が2・5人で消費額が月25万円ですから、1人あたりの消費額は10万円です。

・就業者の7割程度が第三次産業で働いています。日本は「ものづくり大国」といわれますが、製造業で働いている人は全体の2割以下です。

・一生正社員であれば生涯賃金が2億円、一生非正規社員だと8000万円

・エネルギー消費の4割は製造業、2割強は運輸部門で、家庭部門(乗用車は含まず)は14%程度を占めています

・対米輸出は過去20年以上も増えていません。

・日本の家計が老後に備えて貯蓄をしていることが、経常収支の黒字の背景であると同時に、対外資産の源ともなっているのです。

・経済学者も市場に任せておけない物事があることは認めています。「市場の失敗」と呼ばれるものです。これを補うために、財政には、公共サービス(行政サービス)の提供、所得再配分(貧富の格差の是正)、景気の安定化、という3つの役割があります。

以上を記憶してるだけでも居酒屋談義で圧勝できる気がします。
福島第一原発観光地化計画 思想地図β vol.4-2
東 浩紀 , 開沼 博 / ゲンロン (2013-11-15)
読了日:2014年3月10日
前作チェルノブイリ本に続いてこちらも。Twitterで話題になっていた当初からやっぱり「観光地化」という表現にはひっかかりがあったし、若い人たちを中心に原発事故を「素材化」している感じは少しも好きになれなかった。読了後にそれが晴れたわけでもないのだけど、ダークツーリズムとして責任を持って完成させていくべきであるという点には強く同意したい。そのために露悪的になる必要は全くないと思うし、逆にそれは損だと思うのは変わらないのだけど。

この本を読んで以来、ダークツーリズムという言葉は常に僕の頭に引っかかり、水俣では公害の博物館にでかけたり、リバプールで奴隷博物館に行ったりした。本で読むのと現地でいろいろな説明を聞いたり現物を見るのとは大いに違う。まだこれからの作業になっていくと思うけど、いつか地球の住民にひろく2011年3月に日本で起こった出来事について(誰が悪かったのかとかといった主張はとりあえず度外視して)素材を分かりやすく提示する場を作る必要は多いにあると思う。
国の死に方(新潮新書)
片山杜秀 / 新潮社 (2012-12-15)
読了日:2014年3月5日
以前新潮45で読んだことのある著者がセッション22に出てて2.26事件と東北農民の話が面白かったので探してみた。

・明治憲法とは国家の自爆装置だった

という見方は面白いと思った。

・幕府や足利尊氏の再来を阻止するには? 最初からなるたけ権力機構を細分化しておくのがいい。内閣、議会、裁判所、陸軍、海軍を切り離す。ヨコのつながりを少なくする。それぞれの中身もさらに切り刻む。
・天皇に脅威を与えかねない政治的大物を、構造的に現れなくする仕掛けである。

なるほどそういう見方もあるのかと感心した。その先に第二次世界大戦への参戦、敗戦があったのかと。

下記はラジオでも著者が言っていたことだ。

・とりわけ東北の農民の窮状は目にあまる。傷ついた農村を復興しなければならない。緊急性を要する。そのためには政治と経済の仕組みを暴力的に改変するのもやむをえない。「二・二六」の思想の根幹である。

そうして考えるていると戦前の日本と現代日本の構造には繰り返しが多いのかなあと思えてくる。
トラや (文春文庫 な 26-17)
南木 佳士 / 文藝春秋 (2010-09-03)
読了日:2014年2月23日
上野広小路のブックオフで購入。飼い猫トラがタイトルだけど、作者の鬱病との闘病記録が描かれている。人間はこんなにも自分に正直になれるのかと驚く。きっとそれも良いネコがそばにいてくれたからなのだろう。
医学生 (文春文庫)
南木 佳士 / 文藝春秋 (1998-07)
読了日:2014年2月20日
作者が東北の医学生だった頃の体験をベースに描かれた小説。読みながらなんだろうこの既視感は・・・ってずっと不思議だった。ずいぶん長いこと考えて、あ、大森一樹監督の映画「ヒポクラテスたち」だ、と思い当たった。ちょうど僕が大学に入学する直前、春休みだったと思うけどお昼にテレビで放映していたのを偶然見たのだ。京都の大学ってすげえ、って勝手に感心しながら(あとでわかったけど凄かったのは京都ではなく医学部だった)。

読後、僕のまわりにいるたくさんのお医者さんがみんなこんな物語を持っているのかと思えて、これまた勝手に感心してしまった。
宮台真司・愛のキャラバン――恋愛砂漠を生き延びるための、たったひとつの方法
宮台 真司 , 鈴木 陽司 / にどね研究所 (2014-01-08)
読了日:2014年2月14日
日替わりセールで買ってみた。宮台氏があえて宗教的な装いで煽っているのは表紙を見ても明らかだと思うけどけっこうヤバい本だなと思った。僕はいままで本気でナンパしたことないが(学園祭のライブのチケットを売りつけに女子大に行くとかそんな程度の声掛けはしたけど)、ここに書いてあるテクニックのほとんどは「営業」と同じだ、と思った。

俗説的に「女にもてる男は営業成績も良い」なんて話を耳にするが、この本を読めばだいたいそれが当たっていることに気づいてしまう。「黒光りする変性意識状態」なんてまんまだ。だからこの本は営業を専門とする会社が社員に読ませるとバイブルになる可能性がある。だからヤバいと書いたのだ。
家族 (文春文庫)
南木 佳士 / 文藝春秋 (2003-08)
読了日:2014年2月8日
「家族」「井戸の神様」「風鐸」「さとうきび畑」の4編を収めた短編集。
表題の家族はそれぞれの視座から家族の死を語るちょっとぶっとんだ作品で、恐ろしく辛辣だ。そうでもしないと収まりがつかなかったのかもしれないな、とふと思った。
草すべり その他の短篇 (文春文庫)
南木 佳士 / 文藝春秋 (2011-09-02)
読了日:2014年2月6日
南木佳士の本をたくさん読みたくなってKindleになかった本はAmazonで大人買いした。
「草すべり」「旧盆」「バカ尾根」「穂高山」の4つの短編はどれも美しい風景がその通りに描かれ、どこか頼りなさげで透明な「僕」の目を通して語られると読んでるこちらも静かで落ち着いた気分になるのが少し不思議でそしてとても良かった。
ヤンキー経済 消費の主役・新保守層の正体 (幻冬舎新書)
原田 曜平 / 幻冬舎 (2014-01-30)
読了日:2014年2月6日
アキヨド有隣堂にて。流行していると聞いたので並んでる本を買ってみた。いかにも幻冬舎の新書だなあって感じ。でもまあある種の若者たちをうまく言い当ててるのかなとも。だからといってレッテルを貼るのはどうかと思うけど。関係ないけどずっと脳裏に浮かんで消えなかったのは以前読んだ原発作業員たちの話である。彼らはまさに地元を愛しそこを守ろうと一生懸命働いた男たちだった。実際あって仲良くなれるかどうかはわからないけど、僕はそういう若者たちってけっこう好きだ。でもだからといって市場として捉まえ、彼らから金儲けしようとまでは思わないんだよなあ。
江戸めしのスゝメ (メディアファクトリー新書)
永山久夫 / メディアファクトリー (2011-10-28)
読了日:2014年2月2日
上野広小路をぶらついててブックオフで。そのあと湯島の中華料理店で一人飲みしながら半分ほど読み進める。面白かった。今年3月までの東京生活時代、こういった読書スタイルがひとつのたのしみだった。
珠玉 (文春文庫)
開高 健 / 文藝春秋 (1993-01-10)
読了日:2014年1月20日
伊藤計劃氏のハーモニーを読んでて飛び出した開高健の名前、そして本作。これはもう読むしかない、とまだもダウンロード。この人はどうしてこんなに文章がうまいのだろう。これからも旅にでるたび読み返したくなると思う。その意味でKindle化されたのは本当にありがたい。

掌のなかの海
玩物喪失
一滴の光

の3編。
津田 信 / 図書出版社 (1977-07)
読了日:2014年1月16日
僕が9歳の時に日本に帰国した小野田寛郎氏が亡くなった件に関し流れてきたツイートから下記リンクを辿って読んでみた。
http://junpay.sakura.ne.jp/index.php?option=com_content&view=category&id=49&Itemid=77

真相はわからないけど当時の報道だけでは世の中に出されなかったことがあったのも事実なんだろう。だからといって僕がどうこう考えるわけでもなく、正直言って興味本位で読んでしまった。
ハーモニー ハヤカワ文庫JA
伊藤 計劃 / 早川書房 (2010-12-08)
読了日:2014年1月13日
虐殺器官の続編として書かれた物語、ダウンロードしたその日に夢中になって読了してしまった。数ヶ月後にはまた再読した。著者にはもう少し長生きしてもらいたかった。
阿弥陀堂だより (文春文庫)
南木 佳士 / 文藝春秋 (2002-08-10)
読了日:2014年1月13日
2012年にベトナムからカンボジアに向かうバスの中で何か読み本はないかなとKindleで検索して出てきた本が南木圭士さんの本だった。とても印象的な本だったのでずっと心に残っていたのだけどふと年明けにまた彼の作品を読みたくなったのだ。理由は思い当たらないのだけど。
またKindleで探したらこの作品に行き着いた。何とも美しい物語だ。映画にもなったらしいけど僕はまだ見ていない。見るのが怖くなるくらいこの本は美しい。この後Amazonで彼の本を取り寄せて連続して読み始めるきっかけとなった。
虐殺器官 ハヤカワ文庫JA
伊藤 計劃 / 早川書房 (2010-02-10)
読了日:2014年1月13日
日替わりセールで。亡くなったときにニュースでみたくらいで著者の作品を読むのは初めてだった。ところが読み始めると一気に彼の世界に引き込まれ、まるで良くできたSF映画を観ているように映像が浮かびあがり、そのうち未来の実写ニュースを見ている感覚にさえ陥った。
虐殺器官とは何か。未来の兵器か何かか。いやそうではなかった。僕だって持っている。もっといえば最近のインターネット上には既にもう溢れている。徐々に実世界にも浸食している気がする。その意味において僕らは着実に彼の描いたSF世界に近づいている。やばい。
統合失調症がやってきた
ハウス加賀谷 , 松本キック / イースト・プレス (2013-08-07)
読了日:2014年1月10日
著者の二人が出演するラジオ番組を通じてこの本を知り、届いた翌日に読了した。
ながらく医療業界の片隅で働いてきたが、この病気についてよく知らなかったし、当然病気した本人から赤裸々な体験談を聞く機会なんてのはなかったので最初は驚きの連続だった。

妙な話だが最近は「精神病はクスリなんかでは治らない、あれは全て製薬業界の陰謀だ」的な話を耳にすることも多い。実は僕も心療内科の多くはあまりに安易に処方しすぎるのではと思ったりもした。だがそれでも近代医療で救われる人は確実に増えているのだ。少しでも早く医療機関に相談すべきだと著者も訴える。

それにしても相方のかっこいいことといったら。薬も医療も大事だけど素晴らしい仲間が見守ってくれたことが大きかったのだと思う。あらためて医療とか普通とか異常とか生活とかについていろいろ考えさせられた。
一度、死んでみましたが
神足 裕司 / 集英社 (2013-12-13)
読了日:2014年1月4日
TBSラジオキラキラで毎週聞いていた著者が倒れたと知ったときは、その病状からもうだめかも、とは思っていた。でもこうやって本を出せるまでに回復しその後もツイートではわりと人生楽しんでおられるようなので本当に良かった。まるで身近な人が病気になったような医療の現場を追体験できたことも読者としては良かった。
1995年 (ちくま新書)
速水 健朗 / 筑摩書房 (2013-11-07)
読了日:2014年1月3日
新年早々の読書。1995年当時僕は30歳だった。確かにあの頃から今ある日本が完成し、年々その完成度を高めてきたのだと思う。素晴らしい国になったとは思うけど一方でその完成度ゆえの息苦しさも深めてきた気もする。それでも僕は2014年の方が圧倒的に良いと思うし、自分には心地よい。
未来改造のススメ 脱「お金」時代の幸福論 Ver.Up版
岡田 斗司夫 , 小飼 弾 / ビンワード (2013-08-04)
読了日:2014年1月3日
著者の二人ともTwitterや著書を通じてしか知らないけど、Kindleの日替わりサービスで案内されたらなんか他人ではない気がしてつい買ってしまった。そんな二人の対談だから既に目にしたことのある話も多いけど、ふたりの発想力や博識には学ぶべき点が多いと思う。オタキングexにはいまだに全面的に賛同できてないけど、ベーシックインカムは「食うために働く」人たちを減らすという意味において賛成だったりと、いろいろ刺激の多い読み物でした。

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